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プロがプロに聞く経営の話
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 パチンコ業界初の公開をめざす
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Guest   ジャパンニューアルファ会長 小巻公平
Host オンキヨー会長 大朏直人


小巻公平(こまき・こうへい)氏

1942年11月3日、神奈川県生まれ。61年、日大藤沢高等学校卒業。62年、日本電子工業学院中退。65年、家電販売業のカナメ電機を設立。71年、同社解散。73年、飲食関係の有限会社亀を設立。81年、ジャパンニューアルファを設立、パチンコ業に乗り出す。現在、神奈川県下でパチンコ店12店舗、居酒屋5店舗、ホテルを運営する。業界初の株式公開にチャレンジするとともに、会社役員を社員選挙で選ぶなど、革新的経営者として知られている。

小巻氏

大朏直人(おおつき・なおと)氏

1941年東京生まれ。65年駒澤大学文学部卒。同年4月、ラジオ部品メーカーに入社後独立。電子機器製造の日本電通 を設立、社長に就任。85年、自動車部品メーカーの丸八工場(現テクノエイト)の再建を契機に、4社の再建に成功。93年6月に東芝傘下のオンキヨーを個人で買収、1年半で黒字経営に転換した。現在、12社の企業集団を率いる。



「会社を潰してでもいいから公開したい」と、パチンコ業界初の株式公開に執念を燃やす小巻氏。業界に従事する30万人の人々に誇りと夢を与えるのが使命と考えているからだ。「事業を生きている証にしたい」という創業経営者の熱い思いに、大朏氏が鋭く切り込んだ。 


大朏 小巻さんは、これまで株式公開した前例がないパチンコを主な事業とする企業として、一番初めに公開することを目指しているそうですね。なぜ、そこまで株式公開にこだわるのですか。
小巻 会社を起こして、公開させるのは、経営者が自分の行ってきたことに対しての証を立てるという意味では、一番の近道なんですよ。われわれは設計士でも建築士でも作家でもないわけですから、生きている証として宇宙に絵を描くとすれば、事業の内容をディスクローズして、社会に認められる存在になり、投資家から集めたおカネで事業を表現することだと。そう思ったのは、十数年前です。公開のためなら、会社を潰してもいいくらいに思っているんですよ。
大朏 それじゃー何にもならない(笑)
小巻 それくらい一生懸命やっていても、まだ、パチンコという業種・業態には差別 があるのです。われわれは勤労、納税、教育という国民に課された三つの義務を果 たしています。納税もしていますが、国民金融金庫など、国の金を借りることは一切できません。そういった意味でも、この業種業態が市民権をいち早く取っていかないといけない。なぜなら三十万人もの人がこの業界で働いているのに、その人たちに、公開もできないような日陰の産業で自分たちが働いていると思わせてはいけないからです。社員が誇りをもって将来のビジョンや、生活設計が描けるようにすることが、経営者としての義務だと思うんです。
大朏 売上高、利益などの数字の上では、大手ベンチャーキャピタルの投資してもらって完璧にクリアしているわけですね。
小巻 ええ。しかし、換金の部分が黒に近い灰色と見なされていることが問題なんです。半世紀の歴史があって、三千万人の参加人口があって、三十万人の人が働いている産業が、不法な業態だというのもおかしな話だと思います。
大朏 消費者金融も、以前はものすごくイメージが悪くて、株式公開するなんて考えられなかったけど、現在は武富士、アコムをはじめ多くの会社が公開・上場し、ものすごい利益を出しています。芸能プロも銀行などからおカネを借りられなかったそうです。ホリプロの堀会長は「だから、今日まで借金はゼロだ」と言ってましたよ。もちろん今は上場会社ですから、どこでも貸してくれますけどもね。いずれにしても現在の経済状況と同様に二極化している。いいところまで行っちゃえば、おカネはどこからでも借りられるし、駄 目なところは駄目なんですね。ところで、現在日本には何軒ぐらいのパチンコ店があるんですか。


大学入試と株式公開の類似性

小巻 一万五千店ほどあります。
大朏 コンビニナンバーワンのセブン-イレブンが八千店ですから、大変な数ですね。パチンコを賭博と考えれば、日本は世界で一番賭博場が多い国になりますね。
小巻 パチンコは賭博とはちょっと違うと思います。賭博というのは偶発性・偶然性がもっと高いものです。パチンコの場合は、経営者が釘の調節をすることで、ある程度利益幅を調整できるので、ラスベガスなどの賭博とは異質な面 があります。
大朏
別に悪い意味で賭博という言葉を使ったんではないですが、いずれにしてもゲームをやって換金できる場所が、日本は世界で一番多い。ある意味で非常に開かれた国なんですね。同時にそれだけ市民に根ざしているなら、本来公開できておかしくないと言えますよ。こういうこと言っていいか分からないけれど、警察官僚にとってパチンコ業界は一番いろいろな利権が得やすい場所なんでしょう。だけど、公開なんかされるとお役所はコントロールするのが極めてやりにくくなるでしょうね。
小巻
うやむやの裁量権が存在するところに利権が発生するのです。ですから、業界のルールをきっちりと決めて、表に出すべきです。
大朏 役所の規制では失敗していることのほうが多いんですよ。たとえば日本の大学は、入りにくいけど出るのは簡単、アメリカは入るのは簡単だけど出るのは大変と、昔から言われ続けているけど、いまだに変わっていないのは、やっぱり文部省の規制のせいなんですよ。
小巻 株式公開もいっしょだと思います。公開したらなんでもありでしょ。パチンコ事業だって、みんなやっています。大学も公開・上場も一緒。入り口論なんですよ。パチンコだから上場してはいけないと言うけど、では未来永劫ずっと、われわれがパチンコをやっていくかというと、そうではない。公開はワンステージですから、その後もさまざまな事業をやっていくわけですよ。公開を阻むということは、その芽までも全部摘んでしまうことになるのです。パチンコ業でなかなか公開できない場合は、まずは別 の新規事業を立ち上げてマザーズで公開しようかとも考えています。
大朏 どんな事業を立ち上げるのですか。
小巻 年内には五つほどの新規事業を立ち上げる予定ですが、まだ発表はできません。


経営者は社内に風を起こさなければならない

大朏 御社の売上高六百億円、経常利益十四億円という数字は、大変なものなんですけど、私の印象で言うと、もっと儲けているのかと思った。パチンコ屋さんは儲かるという話を聞いていましたから。あと、御社の事業内容を見て、相当先のことに投資しているなと感じました。福祉にしろ他のことにしろ、相当人間におカネを投じていらっしゃる。本当に公開だけを目的にしているなら、そういうものを整理すればもっと利益をあげられる。だけど、公開後さらに伸ばしていくためには、人間(教育)におカネをかけていかないとならない。小巻さんの会社の数字には、小巻さんのそういう考えが表れている、と私は見ました。公開した途端に利益が出なくなって、みんなに迷惑をかけることがないように、真面目に経営しておられる。だから私は御社が公開するための応援団になりたいなと思ってます。
小巻 ありがとうございます。
大朏 今度、ソフトバンクの孫さんがナスダックジャパンを立ち上げますけど、あっちのほうはオープンに迎えてくれるんじゃないですか。
小巻 孫さんは、日本の産業界に引き金を引いて入ってきた方ですから、われわれはウェルカムだけれど、孫さんにしてみれば、あえて火中の栗を拾うかなと思います。
大朏 ただマザーズ、ナスダックジャパンなど、いろいろな市場が出来てきていますから、これからは公開しやすいことは事実ですよ。
小巻 ハードルは下がってきていますが、風俗営業法の中にいると非常に難しいですよ。ただ、これ以上は経営者としてはがまんできません。状況に対する問題というより、ビジネスのスピードに対する問題としてね。
大朏 がんばっているのに社会的に認知されないのは悔しいでしょうね。
小巻 裏口上場だって出来ないことはないですよ。
大朏 M&Aすればいいんだからね。
小巻
でもそれでは、この業界で働いている三十万人の人たちが、堂々と胸を張って歩けない。だからこそパチンコ業として公開したいのですが、ただ、今回マザーズで公開を狙っているのは、新規事業の方です。
大朏 ジャパンニューアルファ・グループの一つがマザーズに出られるのですね。
小巻 わが社の八百人の社員にどうやってロマンを与えていくか、ということもトップの役目でしょう。今の時代は、志と感性だけでなくフットワークがなければ駄 目ですから、夢を託して入ってくる社員のためにも、経営者が自分の意地を張るばかりでなく、フットワークを軽くして、選択肢を広げた方がいいのではないかと思ったのです。
大朏 それはどんな事業ですか。
小巻 今年の後半には発表できると思いますけど、大まかにいえば製造業。その方が公開しやすいと思うのです。
大朏
東芝や日立だって、パチンコ台の部品をつくって売っているんですからね。小巻さんが腹立たしいのはよく分かりますよ。それは、しつこいぐらいにがんがん言い続けるしかないでしょうね。がんばってやってもらわないと。「お前はいいところ勤めたな」と社員の家族に言わせるのが社長業の一つの大きな目的ですからね。
小巻 それがここ数年間の最大の苦しみでした。今年もまた九十七人の四大卒が入るんですよ。彼らにロマンを与えないと、これ以上はもう、企業としても駄 目なんですね。経営者は時々、社内に風を起こさなければいけない。その内容はV3、ビジョン(vision)、バイタリティ(vitality)、ベンチャー(venture)だと思います。風を起こして時代と共に呼吸していかないと社員との関係の中でステージアップできない。だから、パチンコ業としての公開はあきらめていませんけど、社員とロマンを共有するために次のステージに行きたいということなんです。



女性が入りやすい店が繁盛する

大朏 パチンコ屋には不況がないというけど、今でもそうなんですか。
小巻 景気が悪くなれば、やっぱり落ちますよ。
大朏 落ちる率が低いんですかね。
小巻 パチンコは、もともと不景気から発生した産業ですからね。ただ、同じ業界の中でも二極化はしています。教育に時間をかけているところと、旧態依然とやっているところとでは、明確に差が出てきています。経営努力している店には、衰退店の顧客が流れてきますから、自然に成長するんです。
大朏 どんなお店が繁盛するんですか。
小巻 一口で言えば、若い女性が入りやすい店です。サービス業は女性が入りやすい店が繁盛します。女性が入るということは安心感があるからで、そういう店には男性も入ってきますからね。
大朏 店の業績は店長によって変わるものですか。
小巻 営業はやはり人です。店長によって変わります。うちは一律の教育体制を持っているから大きくは変わりませんけど、やはり人で変わりますよ。
大朏
そうでないと、個性が発揮ができなくてつまんないものね。銀行なんかも支店長が変わるだけで一気に良くなることがざらにあります。別 に金利が変わるわけではないんですけどね。
小巻 マネジメント、プラス人徳でしょうね。


創業経営者は終わりなき駅伝のファーストランナー

大朏 ゼロから会社を立ち上げて、いろいろな苦労をしてここまできた中で、どんな経営観を持つようになりましたか。
小巻 経営者としては、自分の生き様、考え方が、社会と共有できるものだという証が欲しいです。会社うんぬ んじゃないと思うんですよ。人道は仁(思いやり、いつくしみ)だと思っているんですよ。志があるとすれば、時代を生きた明確なる証が欲しいということだけです。おカネとか命はいつかは返すものだから関係ないと思います。「創業経営者は終わりなき駅伝のファーストランナー」だと思っているのですが、次のランナーに対してどういうタスキを渡せるかが大事だと思います。マラソンなら42.195キロを一人で走っちゃえばいいんですけど、経営はそうはいかない。果 てしなく続く駅伝じゃなければいけない。求めているのは、その証だけなんですよ。
大朏 そういう思いを持ったボスの下で働く社員の人たちはハッピーですね。またこの業界に携わる人たちのためにもぜひ頑張ってください。最後に、この雑誌を読んでいる若い企業家への励ましの言葉をお願いします。
小巻 トップになるんだったら、V3しかないです。ビジョンを明確に、ベンチャー的に、バイタリティを持つ。そして、若い人には可能性があるから、まず動くこと。よき発想はよき行動からくるんです。よいか悪いかは結論ですから、まず動くこと。行動しながら考えればいいんです。

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雑誌「企業家倶楽部」2000/6月号より転載。
本欄は(株)企業家ネットワーク様のご好意により実現したことを記し、謝意を表させていただきます。

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