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プロがプロに聞く経営の話
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 首相公選、憲法改正に期待。日本人の誇りを回復する外交を
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Guest   白鴎大学教授 福岡政行
Guest 国際コンサルタント 岡本行夫
Host オンキヨー会長 大朏直人

「構造改革なくして日本の再生と発展はない」という信念の下、小泉内閣が発足してはや3ケ月誕生の背景には、国民の政治への意識の高揚があった。小泉政権誕生を機に政治にも感心の深い大朏氏が、親しい2人の友人に素朴な疑問をぶつけた。岡本氏は「日本人の誇りを回復する外交を望む」、福岡氏は「首相公選と憲法改正に期待する」と小泉政権に注文した。

Host
オンキヨー会長
大朏直人
Naoto Ohtsuki

Guest
白鴎大学教授
福岡政行
Yoshiyasu Sakai

Guest
国際コンサルタント
岡本行夫
Yukio Okamoto


■ 賢明な国民に後押しされ誕生した小泉内閣

大朏   今回は、政治評論家のトップの福岡先生と外交に明るい岡本先生にお話を聞けるチャンスができて光栄です。まず小泉首相の誕生は予想しておられたんでしょうか。
 
福岡   私は小泉さんが勝てるとは思っていませんでした。むしろ小泉さんは戦うだけ戦って田中真紀子さんと新党を作るぐらいの感じなのかなと思っていました。勝てると思ったのは予備選の寸前に会った時に、「手応えが全然違う。とにかくもう街頭で何をやっても圧倒されるようだ」と、彼が手応えを私に語った時です。結果的には予備選で大勝。自民党員だけによる選挙とはいえ、初めて総理大臣を国民が選んだという感じになったわけです。
 
岡本   私も最近の国民は非常に賢明だという気がしますね。国民を政治家とか、官僚とか財界とか、有識者とかいろいろなグループに分けてみると、そのなかで一番成長して、高い意識を持っているのは一般国民じゃないかという気がしますね。政治家は時間の九割を政治家でいつづけるために使っていて、国のあり方についての方向性というものは出て来ようがない。私が幹事役をやっている三千人ぐらいのシニアの方たちのコミュニティでは、「どうして今の日本はこんなになっちゃったのか」とか、「どうして若者はあんなにルールをわきまえないんだ」とか言う声が絶えません。それは国の形というものが見えていないからではないのかと思います。そういうことに対して自分の意見をはっきり言う政治家がいないのです。小泉さんは自分の不利益になることを承知の上で言い通すわけでしょう。きちっと自分の信念を通している。自分の政策を訴える人に国民は飢えているんじゃないでしょうか
しっかりと足を地に着けて信念を語ってくれる、そういう政治に対する渇望だと思います。
 
福岡   岡本さんがおっしゃったように、自己保身というんでしょうか、政治家の自分のことしか考えない一面を見てしまった時に、もっとも自民党的でない小泉さんを党首自らが選出した。その時に、初めて日本の有権者がクレバーになったと感じました。組織の内部の人たちに嫌われるぐらいの厳しさを、とにかく実行しようという小泉さんが、とうとう国民の声に押されて選択されたのかなと思います。
 
大朏   野党はそういうことに気がついていないんでしょうか。
 
岡本   国民の方が野党のご都合主義的な面をよく見るようになってきました。80年代の国民の意識はそこまで先鋭ではなかったと思いますね。この十年間、日本の国際競争力が落ち、国際社会でも尊敬されなくなっているということが、大変なフラストレーションとしてたまってきているんだと思います。一、二年マイナス成長でも仕方がないなんて言う人に、あれだけ票が集まるなんて80年代では考えられなかったことです。次から次へと状況対応的な政策を聞かされ、それが何一つ実らなかったことをみんな知って、この十年間で日本社会はおかしいぞという気持ちが急速に浸透したんでしょう。
 
大朏   小泉さんも首相公選を言っておられ、非常にいいことだとは思うんですが、本当に首相公選をやったら、たぶんタレントのキムタクが当選しますよね(笑)。人気のある者だけが当選する怖さがあります。首相公選をして本当にふさわしい人を選べるレベルが、日本国民にあるのでしょうか
 
福岡   日本の有権者はかなり学習してきました。何もわからないでキムタクだとか長嶋監督だとかを選ぶ人もいるかもしれませんが、総理にはなれないと思います。だから、私はここまで来たら、有権者を信じたい。多少の失敗はあるかもしれませんが、その失敗の中で試行錯誤して学習して、日本の有権者は「クレバー」になったということでしょう。それにこれだけ経済が厳しければ、人気投票をするような日本人は、いても少数派です。三十年前とは違いますよ。
 
岡本   ここ五、六年でもずいぶん学習してきたと思いますね。キムタクに入れる人は、そもそも投票に来ませんよ。投票に来る意識のある人というのは、投票率を見ればわかるように六割ぐらいです。私は、民主主義社会においては六割という数字は割合健全な数字だと思うんです。六割ぐらいの、自発的に投票に行って政治を考えなければいかんと思っている層の意識は、学習し成熟してきていると思います。また、残りの四割の人達が投票に行こうと自発的に思い始める時には何か考えることがあるわけで、その時にはキムタクに入れようと思って投票所に来るわけではないでしょう。私はそこのところは信頼しています。時代性を考えても憲法改正は必要。
 
大朏   なるほど。私もそう思いたいです。ところで、憲法改正についてもそろそろ考え始めてもいいように世の中は変わってきているんでしょうか。
 
岡本   これだけオープンに語られるようになりましたからね。でも野党は、憲法調査会を設置することさえ反対です。だから、どこまで成熟したかは、政治家のレベルではわかりませんが、一般の国民の間ではタブーは少なくなってきていると思いますね。
 
大朏   日本の憲法は、まず何を改正すればいいんですか。
 
福岡   当面は、首相公選ということで憲法第六条の改正に手をつけることになるでしょう。首相公選を考える国民が、毎日新聞の調査では八割ですから、そこまで国民の意識は高まってきているんです。そして憲法第九条もやはり、必要最低限度の軍隊は保持し、集団的自衛権を確約すると改正していく。ただ、アメリカでさえも軍事費は、三千億ドルが二千五百億ドル程に減っているわけですから、一方で軍縮をきちんと考えなければなりません。あいまいにしてきた日本を今、全部きちんと整理していくことが大事なんです。
 
大朏   例えば、同盟国関係にあったら、お互いを守るために兵隊を出すのは、私などは当たり前だと思いますが、岡本さんは長い間日米安保を担当しておられて、どんなことをお考えでしたか。
 
岡本   憲法についていえば、五十五年間も経って未だ一言一句さわっちゃいけないというのはナンセンスですね。私は、当然改正されるべきだと思います。今の成熟した日本の目で見れば、制定当時にはなかった環境問題もあります。男女同権についても、女性に参政権が与えられる前にできた憲法です。時代性を考えても直すところはいっぱいありますよ。ただ私は、第九条については意外に慎重派というか、合目的的派でありまして、第九条を口先に憲法論議をやってみても、国論を二分するだけで、ろくなことにはならないと思っています。集団自衛権というのは、もともと国家保有の権利ですから、集団の自衛権を禁じるところをはずしてしまえば、すべての国家は国際法上、本来の地位に戻るだけです。


■ 今、改めて問われる政治家の資質

大朏   首相公選も憲法改正も公言して、小泉さんは総裁になりました。大きな流れが変わりつつあるのは事実だと思うんです。最近は尊敬できる政治家がいないから、政治家になりたいと思う子どもがいないと聞きます。お二人から見て、尊敬できる政治家はいますか。教育を論じられる人、防衛を論じられる人、そういう人たちが国民の前にもっと出てくるチャンスがないと、国民はほとんど知り得ないと思うんです。
 
福岡   議員内閣制というシステムにも問題があって、それは大統領制とは違いますから、どんなに強くても十両で優勝したっていきなり横綱(首相)にはなれない。議院内閣制は、システムとしてこんなにテンポの速い時代には馴染まないんじゃないか、民主主義の枠の中で独裁者を作った方が物事は動くだろうという意見もあります。でも日本という国はなかなかそういうものを変えませんね。以前、国会議員で信頼できる人はいますかという調査をTBS(JNN)で行った時、いると答えた人は七百人のうち十数%しかいなかった。信頼できる政治家が、不足しているというよりも枯渇しているという状態です。今回は田中真紀子さんのバックアップがあったにせよ、小泉さんが最も自民党的でない自民党で、窓際で、一匹狼で、シャイでロンリーな人だから選ばれた。しがらみがなくて、自分たちの方に目を向けてくれる、いままでのシステムだとか発想だとかと違うことをきっとやってくれそうだからという人が望まれたと思うんです。有権者の方が、永田町よりも遥かに先を進んで、やっと自民党も追いついてきた。今一番気がついていないのはマスコミでしょう。こんなに変わるとはみんな思ってないんですから。
 
岡本   私は尊敬できる政治家はいます。国会議員をみていますと、これは見事に日本国民のセグメントを代表しているんです。私は国民の中ですごいと思う人が三割、凡庸が四割、いまひとつの人が三割いると見ていますが、国会議員もそのまま同じ割合だと思います。だから、選ぶ側にも問題があることですが、決して優れた人たちばかりが選ばれてきているのではないんです。この優れた人三割の中にはいい人がいますよ。例を挙げれば、梶山静六という人はすごい人でしたね。国をどうするかということだけを考えて、すさまじい馬力で正しいと思うことをやった。もちろんマスコミは、そういうふうには評価していません。マスコミは、選ぶ時には誉めたりもしますが、選んだ後は嘲笑と揶揄の対象にするんですね。国民の側も議員のところに行くのは、利益を求める時だけでしょう。選んだ後は政治家が何をしてもいいと言わんばかりです。そのせいもあって、政治家というのは、汚い、利権だけが目当ての職種だということになってしまっているんですね。でも、それもさっきも言いましたように三割です。四割はまあまあ凡庸の人たちで、残りの三割は見事にクリーンな人たちですよ。
 
大朏   われわれの世界もそうじゃないですか。政治家だけじゃない。マスコミも新しく出てきたベンチャー企業家をさんざん持ち上げておいて、そこそこまでいくと、どーんとたたいているというのは変わらないですね。日本人の習性というか、日本のマスコミにはそういうところがあります。
 
福岡   僕は三対四対三には反対です。教育の現場を見ても、頑張っているなあというのは一割か二割ですよ。凡庸な人が五〜六割でね、もうちょっと頑張った方がいいんじゃないのという人が三割ぐらいですよ。平均点主義のいわゆるゆとりの教育ですから。
 
岡本   福岡さんなら梶山静六以外にどんな人を挙げられますか。
 
福岡   ここでは名前は出しませんが、挙げたい人は二十人ぐらいはいます。ただ、日本人の中で、総理大臣になってくれと言われて断ったのは伊東正義だけですよね。「表紙が変わったって中身が変わらなければ」という名せりふで断られた。小泉さんも今、そういう趣旨のことを言い続けています。中身を変えることができればいいですが、結果によっては、百日天下となるか、救世主となるかどちらかだと思います。
 
大朏   では、小泉さんは、暫定であるとか、参院選の結果を待ってということでなく、よければ続けさせたい男の一人ということでいいですか。
 
福岡   窓際だった人が国民に選ばれて結果を出してくれれば、日本の政治は変わるでしょう。派閥は中選挙区制の弊害ですから、今のように小選挙区制になれば、もう限界だったんでしょう。それに、暫定などと古い政治スケジュールはもう通用しません。すでに新しい政治局面に入ったからです。新しい時代には新しいお酒、新しいコップが必要です。自民党がだめだからといって、非自民の誰かを選ぶというのが今までの有権者の選挙手法でしたが、本当は違う。もっと責任を持って、未来に向かって何かをやってくれる人がいればいいのに、自民党もだめだけれど野党もだめだということを有権者は感じているんだと思いますよ。
 
岡本   小泉さんになって、参議院選は、自民党は勝てそうなんですか。
 
福岡   内閣の支持率が連休明けで朝日新聞の世論調査で78%とかなり高かったですから、相当強いでしょう。小泉さん自身そのことを良くわかっていると思います。
 
大朏   世界の中では日本の首相選びはどう見られているんでしょうか。
 
岡本   これまで一番期待されたのは細川さんが出た時です。ようやく日本も改革されるという期待感が一番高かったです。ところが、細川さんでも何も変わらなかったので、どうもこの国は誰が出てもだめだということになりました。だから小泉さんが出てきても、あの時もだまされたけれど、まあ、今回も他には誰もいそうにないなあと、少々、斜に見ているところがあります。マーケットに如実に表れてきますよね。外国人が日本の市場に戻ってくるのかどうか。彼らは今度はムード的なものにはだまされずに、中身を見ていますよ。
 
大朏   短期間に何人もトップが替わってきた。それは会社なら信用を落とす要因になりますが、特にアメリカではやはり日本に対する信用のなさにつながっているんですか。
 
岡本   信用がないこともそうですが、首相の名前を覚えた頃にはもう替わっている。クリントン大統領は任期中に、一人で七人の首相を相手にしなければならなかったんですから。
 
大朏   日本のマスコミは、スキャンダルを見つけては引っ張りおろそうとしています。けれど、そんなことをして日本の恥をさらしたって仕方がない。マスコミももう少しそういうことを学んでほしいですよね。では最後に「変革」が口癖と言われる小泉首相に、これは是非やってもらいたいということを挙げていただけますか。
 
福岡   やはり首相公選と憲法改正ですね。それにハンディキャップを背負っている人たちに対し、助成金を出すのではなく、自立できるように仕事を与えるという方向を是非実現していただきたいと思います。
 
岡本   私はありすぎて一言では言えませんが、外交の世界で一つ言うならば、日本という国の形を他の国に見せてほしいですね。憲法を改正しなくたってできる範囲でやることです。日本の利益を守るためには、他の国がやっているようなことをきちんとしてほしいということです。それで結果的に日本人としての誇りを持たせてください、というのが外交面では一番大きいですね。
 
大朏   ありがとうございました。


大朏 直人
(おおつき・なおと)

1941年東京生まれ。
65年駒沢大学文学部卒。
同年4月、ラジオ部品メーカーに入社後独立。電子機器製造の日本電通を設立、社長に就任。85年、自動車部品メーカーの丸八工場(現テクノエイト)の再建を契機に、4社の再建に成功。93年6月に東芝傘下のオンキヨーを個人で買収、1年半で黒字経営に転換した。
現在、12社の企業集団を率いる。
平成の再建請負人の異名がある。
岡本 行夫
(おかもと・ゆきお)

1945年神奈川県生まれ。
63年一橋大学経済学部卒業。
同年外務省入省。パリOECD日本政府代表部、北米局・北米一課首席事務官、カイロ日本大使館一等書記官、ワシントン日本大使館参事官、北米局安全保障課長、北米第一課長などを経て91年外務省退官。同年岡本アソシエイツ設立。
現在、国際コンサルタント、外交評論家として、政府関係機関や企業への助言活動の傍ら、新聞、雑誌への執筆、各種講演など幅広い活躍をしている。
福岡 政行
(ふくおか・まさゆき)

1945年東京都生まれ。68年早稲田大学政治経済学部卒業。73年早稲田大学大学院政治学研究科博士課程修了。73年明治学院大学法学部非常勤講師。76年駒沢大学法学部専任講師。80年駒沢大学法学部助教授。92年白鴎大学法学部教授。政治学を学ぶ上で、机上の研究よりもフィールドワークを重視し、何ごとにも現場を観察することが肝要というのがモットー。全国各地から得た生の情報をもとに、実証的政治学を研究している。

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雑誌「企業家倶楽部」2001年7月合併号より転載。
本欄は(株)企業家ネットワーク様のご好意により実現したことを記し、謝意を表させていただきます。


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